この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
律子は、知っているのだろうか。
彼女が幻想(あい)を語れば語るだけ、私の焔は弱っていく。
律子の見つめる世界はいとも烈しく官能的なのに、その肉体は、少女の背伸びほどの遊戯しか知らない。つまらない女だ、悪辣な女だ。私が何を欲しているか、律子はそれを想像する時、彼女以外の何者の影も見出さなかろう。
まづる──…。
どんな女も代わりにならない。
私を支配しようとしなかったくせに、私の細胞の隅々にまで、今も麻薬のような快楽を残している。
「律子……。我慢、出来ない……。貴女の愛が、私をこんなにしたのよ……」
体内は、禍々しい黒に補食されていた。空洞だ。その空洞を浮き彫りにするのは、私の最愛のパートナー。
私は、クズも同然の私自身の肉体を、最愛のパートナーに押しつける。