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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
私は美園を見送ると、薬局の袋を開けた。
屋敷にいた頃、度々テレビのコマーシャルでも見かけていた瓶に入った薬品は、一時の疲労を慰めこそすれ、気休めだ。
美園が私に与えるものは、安全、慰労、そして少しの情欲だ。
地下でも丸裸で生活している私は、ドレスに身を包んでいた。
淡いパステルピンクのロング丈、たっぷりのフリルが使ってあるパニエが仕込んであって、大きく開いた胸元は、小花柄のレースでぼかしてある。屋敷にいた時分の私であれば、袖を通すのにも躊躇ったろう。だが、私に美園の指定を拒む権利はない。美園は、私にあらゆる格好を強制していた。ある時はセーラー服、またある時は寝間着、生身にエプロンとニーハイソックスという時もあった。
薬の効果で頭は明瞭に冴えていても、私は束の間の人間らしい心地に酔って、微睡んでいた。
ちゅ…………
もったりとした火照ったものが、私の寝息をにわかに塞いだ。
「…………」
「おはよう。眠り姫」
美園は私が目を開けると、今しがたのキスを繰り返した。
私は美園を受け入れて、口内を割る舌を迎えて唾液を交わす。
じゅる、じゅる……
じゅ、じゅるっ…………
「んんっ、ん…………はぅ、んん」
「きよらちゃんは、何でも似合うね。お客さん達が君を取り合うのも無理はない。可哀想に……こんなに若くて愛らしいのに、君はもっと綺麗な服を着るべきだ……」
「あっ…………ああ、んん……」
美園の唇が私のそれを啄ばんで、その舌が、啄ばみのあとをなぞっていった。