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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
美園は店長に話をつけた。私の養子入りの話を無碍に出来ないよう、追いつめたのだ。
私の希望がとりあわれなければ、店の不正を公の場に引きずり出す。
そう、美園が脅迫したのである。
私は美園の娘になった。
住宅街にひっそりと建つ邸宅は、美園の他に四人の使用人達が暮らしているだけだった。
私は穀潰しになることを拒んだ。だが、美園の目的は謝罪だ。私は労働も許されないで、彼が新たに雇った使用人をつけられた。お姉様が気に入るような、若く愛らしいメイドだ。私はメイドに最低限の身の回りの世話だけをさせて、昼間は彼女と勉学に励み、夜は雑談やゲームに興じた。私は、高校一年生の夏からの遅れをすぐに補った。
美園は私に衣服や家具を買い与え、昼間出歩く分には不自由しない程度の小遣いを与えた。このまま美園きよらとして、ガラス細工のごとくの箱入り娘になって婿養子を待っていれば、彼の希望は満たせるだろう。
それでも私は、どれだけ悪い人間も(正確には悪い人間の実兄も)、愛するべきだと考えている。
あれだけの生活から掬い上げてくれた美園。
私は、彼に恩を返したい。