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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
「ずっと働かないわけにはいきません。美園さ──…お義父様はお義父様の将来があるのですし、私の面倒ばかりご覧になっていては、私の胸がもちません。兄に勘当されて、あんな仕事をさせられていた私など、簡単に貰い手も見つかるはずがありませんし、就職して生活出来るようにさせていただけませんか」
美園は、涙を流して私を抱き締めた。
背中をさすって、お父様でも見せなかった慈悲を以って、私の来し方を労った。
「なんと優しい娘なのだ……。きよら、君のような娘が何故……。仏野さんは、今は遊さんが家長を務めているのかね?きよらをいじめたのはあいつか、成敗してくれよう。私は後悔しているよ……きよらが愛らしかったばかりに、私も君には随分酷いことをしてきた……」
私は、お姉様やお兄様の怖ろしさを美園に伝えた。
仏野は裏社会とまで繋がっており、私の居場所が明らかになれば、この善良なお義父様まで議員の未来を断ち切られる。
だが、美園は頭に血が上っていた。私は彼の身を案じるよりも、私自身の怯えを主張した。お姉様達に見つかれば、以前のような狼藉に遭う。そして、美園も私も消されてしまう。
かくて私は、美園の管轄する市の福祉施設の重役を務めることになった。
第5章 私の暗黒時代のこと──完──