この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
淫徳のスゝメ
第6章 私が見た海の向こうの嘲笑のこと
「こっちは日本と違って、自由主義を迫害しないお国柄だからな。もちろん、よそ見や浮気を糾弾する独善者もいる。だがな、パートナーが外に恋人を持って喜ぶヤツらは珍しくないし、彼らはむしろ恋敵に感謝をする。自分じゃ与えてやれないものを与えてやれる第三者、或いは、依存回避の薄め液。オレがポリアモリーの会合で話をしたボビンという男はな、パートナーのアンソニーに自ら不倫を提案した。何故だか分かるか?アンソニーは夜もワンパターンなプレイしか出来ないで、昼間はボビンをメールや電話で監視する。休みの日には、べったりくっついている始末だ。ボビンはアンソニーの将来が心配になったんだろうな、可愛い子には旅をさせたんだそうだ」
「やっぱり、お父様達の言っていたことが正しかったのね。一対一の関係は、私達をダメにする。人間が人間を束縛しては、自立心が削がれるだけなのね。それにしても、お兄様は何故、そんな会合に?」
「紀子に勉強させるためだよ。オレは、そろそろ二人目の配偶者を得ようと思う。しかし乱交に混じる紀子も、オレがここにもう一つ指輪を嵌めることは反対らしい。それでこの土地に連れてきたのさ。日本みてぇな後退国に引きこもってたんじゃ、あいつはいつまで経ってもバカな偏見に縛られる。オレらの故郷の連中は、愛だの恋だのセックスだのを恥じらうばかりで、そのくせ都合の良い時は、エンターテイメントにしややがる。その点、先進国は違う。自然の営みに真剣に向き合い、真剣に思考しているからこそ、真理を見出す。古めかしいジェンダー論を展開している日本人の上品ぶりは、結局、それらを羞恥にかこつけて不真面目に考えてきた証なのだ」