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淫徳のスゝメ
第6章 私が見た海の向こうの嘲笑のこと
翌朝、アメリカ全土をスポーツ界のスキャンダルが伝播した。
球技のアメリカ大会に出場を控えていた選手らが、試合放棄したという。
宿泊していたホテルで朝を迎えた選手らは、大半の身体に異常が見られた。主な症状が、全身を襲う甘ったるい熱、下腹部の疼き、勃起だ。強い催淫剤を投与した具合の男達を除いても、アヌスが破損していたり、腰痛だったり、甚だしい二日酔いになっていたりした。
選手らをひょうろく者におとしめたのは、水商売の少女達だ。
報道によると、ホテルに集って前夜の激励会を開くことを提案したのはチームのキャプテン、三十人近いホステス達も彼が手配したらしい。世界各国から集った少女らは、薄着にくるんだ肉体を餌に選手達から士気を奪って、剛強な選手らには強い媚薬を飲ませていた。
「姫猫、お前の作戦は傑作だった。愛国心だの団結意識だの、ミーハー心だのの奴隷どもは泡を吹いている。ヤツら、あいつらを盲信していたからな。世間にはスポーツをむやみに重要視しているきらいがある。芸術、文学、その他あらゆる文化を見下してまでな。世界試合が開かれた日にゃ、選手を持ち上げ、虚栄心を押しつけて、彼らが万人共通の志で通じ合ってでもいると言わんばかりに傲りやがって、熱量のない人間が視界に触れては軽蔑して、反逆者よろしく差別する。どうだ?今朝はマスコミが選手どもを叩いているぞ。国民どもは、昨日まで期待だの国の代表だのうっとりしていた対象に、国の恥、税金泥棒と罵っている。団結に浮かれる人間達が、それを幻想と思い知った歴史的な良い朝だ」
私は、テレビから流れるニュースに耳を傾けていた。
腹の奥底が未だに疼く。襟ぐりの開いたカットソーを選んだのは、鎖骨に残った刺戟の残滓をいつでも眺められるようにしたかったからだ。
神に仕える神父は酷い変態男。国の期待を背負った選手達も、本能には抗えない。
哀れだ。
私は、嘲笑されるべき連中の嘲笑の的になった彼らを穏やかな心地で哀れんだ。
第6章 私が見た海の向こうの嘲笑のこと──完──