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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
昨年とは違う碧落が、地上の春を明るめた。
まづるやお兄様達が帰国している間も、私は丸井やロベルト達の手伝いを借りて、結婚式の準備を進めた。
私達の式場は、ひと昔前、西洋から移り住んできた貴族が暮らしていたという城の跡地だ。
小粋な建造物なら見飽きていよう欧米人も、ここにおいては別格らしい。
私も現物を見て納得がいった。
曲線と凹凸(おうとつ)の折り重ね、無限の華を極めたバロック様式の建造物は、所どころに施してある金色が補翼して、晴天を吸った白の石材にきららくガラスさえクリスタルに見まがう。改築されて今は公園として機能している庭は、見るからに腕の利く庭師の傑作と分かる。
人前式は、城の一角、寝室だった広間を借りる予定だ。
一方、披露宴は世間の人間とやらの好みに合わせて、うんと開放的なプランを立てた。折角、カップル達や家族連れの散歩道が囲繞している。私達は一階のエントランスホールを開放して、披露宴中も、公園の通常営業を許可したのである。
「ご結婚おめでとうございます。では、始めていきましょう。お式から披露宴の間にお色直しはされますか」
「いいえ。式で着るオートクチュールのピンクのウエディングドレスを、ケーキカットまで着用しますわ」
「ピンクですか、珍しいですね。披露宴でカラードレスをお召しになる花嫁様は大変よくいらっしゃいますが……。ということはお二人は披露宴の方で白を?」
「分かりません。ケーキカットのあとに着替えるドレスはお互い秘密でオーダーしているんです。私はまづるの、まづるは私のを。彼女がどんなものを私のために選んでくれているか楽しみですわ。でも、少なくとも二度目のお色直しで着るものは、パールホワイトに七色の花モチーフのケミカルレースが散りばめてあります」
「それは素敵ですね。姫猫さんもまづるさんもお美しいから、お二人とも、選ぶの楽しかったでしょう。あ、お色直しは二回で良ろしかったですか」
「ええ」