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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
プロポーズを受けて四ヶ月が経つ。
私以上に婚姻制度を嫌悪していたまづるが、何故、こんな奇行に走ろうとしたか。
問うてもまづるは諧謔で私をあしらうが、あらかた、例の意地悪に食傷でもしたのだろう。
私の動機は、お兄様の真似をしたがる世間の幼い妹らしい好奇心だ。
お兄様が重婚したから、私もする。それにしてもはしゃぎすぎているのは、お兄様にも指摘されたあとである。
離れていた間、狂おしいほど会いたかった。
まづるを、私のものにしたい。
指輪が本物であれレプリカであれ、のべつ起きる発作が満たされることはあるまいが、少なくともこの奇行を楽しんでいる間だけは、否が応にもまづるに会える。
「記念品贈呈の話に入りましょう。姫猫さんはお兄様の遊さんに、まづるさんはお祖母様の由加利さんにお渡しいただくところですが、クロス渡しをご存知ですか?もちろん、ご自分の親御さんにお渡しいただいても構いません」
「これからお世話になります、ということだっけ?そうだなぁ、私は遊さんに渡したいわ。姫猫をあまり独占しないよう牽制も兼ねて」
「あら嬉しい。私もまづるのお祖母様に渡したいわ。貴女の両親、私との結婚に猛反対なんて失礼しちゃう。お祖母様には感謝しているもの、これから仲良くしていきたいわ」
披露宴の打ち合わせは、頭に花でも咲いていなければ、全身が鳥肌だらけになるか、ナンセンスなジョークに吹いてしまうかのどちらかになろうキワモノだった。ブライダルプランナーは常に最新の情報、流行を仕入れ、パートナーの約束を交わした客達にそれらを提案しているらしい。
私は、けだし正気ではない。
一昨日までまづるとまた遠距離にいた所為で、肉体が彼女に枯渇して、脳にまで差し響いていたのか。
お兄様の指摘に従うまでもなかった。私はまづると存分に恋人ごっこを賞翫出来る、且つ存分に見せかけの愛を見せびらかせるプランを選択した。そして、とろけるような甘みに満ちた。