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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
* * * * * * *
「私、仏野姫猫は、ここにいる彼女──…早良まづるに変わらぬ愛を捧げ、生涯のパートナーとして、どんな時も共に歩んでゆくことを誓います」
リハーサルに倣った定型句のあと、私は寝台に腰かけたまづるに跨って、その唇をキスで塞いだ。
まづるは何重ものドレープのかかったプリンセスライン、私はウエストリボンから豪奢なバッスルが広がるチュチュ風のドレスをまとっているだけあって、そこら中にフリルが絡まる。
割れるような拍手が私達二人に襲いかかった。
刹那離れた私とまづるの唇は、二度目のキスを交わしても、微かな吐息、けたたましい夾雑音にまみれて、濡れた音色も無に等しい。
「ん……」
「まづるぅ……」
「おめでとー!!」
「姫猫、両手に花ね!毎晩選び放題じゃない!」
「野暮な人。姫猫は彼女に夢中でしょう?ご覧なさいよ、キスの長いこと……。遊との時は、あんな風じゃなかったわ」
ちゅっ、ぢゅる……ちゅる…………
私の右手はまづるの左手を執拗に撫で、まづるの右手は私の左乳房を揉んでいた。私達の左手には、同じ形のプラチナのリング。ただし、私のそれにはまづるの名前が、まづるのそれには私の名前が刻まれている。
まづるの舌が私のそれに抱きついて、私の唾液を奏でにかかった。
年季の入った寝台は、花嫁二人が転がり込んでも広いくらいだ。今は亡き持ち主も、おそらく、かつてここで愛慾の対象と夜毎の楽しみをしていた。