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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
日本から呼び寄せたひと握りの親族達、なかんずくまづるの客達にこびりついていよう固定概念も配慮して、式同様、披露宴もある程度は定型通りに調えてある。
宴もたけなわになったところで、私達はプログラムに従って、手紙を読んだ。そして涙に濡れた拍手を浴びて、私はお兄様に、まづるはお祖母様に祝辞をもらった。
「姫猫さんは素晴らしいお嬢さんです。うぅっ……ぐすっ、……まづるは、絶対に結婚しないと私に話しておりました。結婚が全てではありませんし、特に今の若い人達には色んな将来の可能性があります。だから、まづるの意思を不幸と考えたこともありませんでしたが、姫猫さんに逢って、私もこの子の祖母として、この子とともに、考えが変わりました。姫猫さんに出逢わなければ、もし出逢わなければ、それこそが不幸だったと。まづる、姫猫さん、幸せになっておくれなさい。姫猫さんもおうちの事情が落ち着けば、必ず国に帰ってきて下さいね。私に力になれることがあったらおっしゃって。私も、孫とこんなに離れ離れになるのは寂しいわ」
「ブラボー!ブラボー、グランドマザー!」
「素敵なお祖母様ね、遊もなかなかのイケメンだけど、親族が素晴らしければ、同じ血筋のお嬢さん方も素敵なのは当然ね」
「姫猫!まづるさんと国に帰っても、私達とまた遊ぶのよ!」
「ふふ、大丈夫よ。皆。お祖母様、ごめんなさい、私、まだ帰ることは難しいですわ」
「お祖母様。姫猫は大変な人と喧嘩をしてるんだ。良かったら好きなだけ泊まっていって。姫猫の家、広いんだよ。お陰で私のメイドも住ませてもらえるから、お祖母様一人くらいどうということないわ。ね?姫猫」
「暮らして下さっても歓迎ですわ、お祖母様」
私とまづる、お祖母様は抱き合った。
陳腐なホームドラマのように、だが至って生真面目に、私達は家族と呼び合い、この泡沫に酔いしれる。
永遠に続いて欲しいと願った。
求めれば得られる快楽とは違う、名誉や富ともまるで違う、色も形もない悦楽。
私の正気はどこへ消えた。