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淫徳のスゝメ
第1章 私が淫蕩に耽るまでのこと
* * * * * * *
私の身の上話は、生け花の稽古から戻ったきよらに中断された。
アフタヌーンティーの世話をしながら、私の話を傾聴していたメイドらは、雇用主の次女の姿を見かけるや、慇懃に彼女を席に勧めて新しいグラスを用意した。
今日のお茶は、ダマスクローズの着香葉とローズマリーだ。遠くで仄かにセージが香り、客人が珍しがる水っぽい肉を挟んだサンドイッチによく合っている。
「この子にはスコーンを与えて」
「かしこまりました、姫猫お嬢様」
二つしか歳の違わない姉妹の話題は、世間一般であれば尽きることがなかろう。
だが、私ときよらに会話はない。
私は氷をたっぷりと使った澄んだアイスティーを飲み干して、腰を上げた。
「姫猫お姉様」
私が振り向くと、きよらは、割ったスコーンにクロテッドクリームを塗っていた。付け合わせは木苺のジャムだ。酸味の優る、うぶな果実の風味の閉じこもったそれは、いっそ私の目には恥肉に映る。