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淫徳のスゝメ
第1章 私が淫蕩に耽るまでのこと
「お母様が悲しんでいるわ。以前のような、正しいお姉様に戻って頂戴」
「私は正しいわ。お父様がそうおっしゃってる」
「異常だわ!お姉様も、お父様も!」
無知を絵に描いたような、芋臭い澄んだ双眸。
珍しく声を荒げたきよらは、赤子のように大きな瞳で私を睨んで、お母様のように慄いていた。
「貴女は何が気に入らないの。私はお父様のおっしゃることをよく聞いて、相応のご褒美をもらっている。……きよら?貧しい人間が、何故貧しいか分かる?やるべきことをしないからよ。働かない人間が対価を得ないのは当然だし、臆病な人間がその現状を超えられないのもまた然り。おまけに魂そのものが貧しければ、それ相応の環境にしか生まれられないの。きよら。貴女は運良く、お父様とお母様の事故のお陰で、仏野家という選ばれた場所にいる。貴女もいつまでも絵空事にうつつを抜かしていないで、楽しく生きる努力をなさい」
「お姉様の努力は、神様に対する冒涜だわ。人としてあるまじきこと。結婚が認められる年齢にも達していない学生が……まして肉親と、あのようなことをされるなんて……」
「神様の意志に従っているの。神様は私達に、女体という徳を与えた。私達に、幸福を望む意欲を与えた。私は私の肉体を存分に使って、人間としてありのまままの意識に従っている。きよらこそ、反道徳的だわ。貴女は誠意だとか常識だとか、ひと握りの人間の決めた幻想に巻かれて、真理を見極めようともしない」