この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
* * * * * * *
ゴールデンウィークが差し迫っていた。
私と使用人達だけで生活を始めた屋敷は、当初からは想像つかなかったまでに賑わっている。
お兄様は仕事のための帰省を除けば私室まで取り置いて住み着いているし、もとより紹也さんは彼の小遣いで生活している。お兄様のお気に入り達も適当に故郷の家族を構いながら、紀子さんのようにここで仕事を始めた顔触れも出てきて、今のところ早良の所有地の一部を管理する他に用事のないまづるも私に付きっきりだ。
「姫猫、準備終わった?」
皐月を間近にした碧落、初夏の光を受けた扉が開くや、そこに見えたまづるの姿は私の目を眩ませた。
「可愛い……。妖精が入ってきたんだと思ったよ」
まづるは部屋に踏み入ると、鏡台にいた私の両手を掬い上げた。
両脇にいたメイドら二人が、あるじのパートナーに会釈する。
「大袈裟だわ。それにこのお洋服は先週も着たばかりだし……」
「何度見ても見違えるばかり。姫猫、花は、一秒でも同じかたち、色をしないんだって。目には確認出来ないほど少しずつ、変化する。姫猫は花だよ。私には見える……姫猫、一瞬でも目を離すのが惜しいくらい……」
メイド達がまづるに同意して、頷き合った。
私は私の美貌を自覚している。だが、お兄様や紀子さん、丸井の賛美を受けるのと、まづるに口説かれるのとではわけが違う。