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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと


「あんまり、私の台詞を取らないで」

「姫猫?」

「そんなに言ってくれては、私がまづるに伝えたいこと、なくなっちゃうでしょ……」



 まづるを住まわせてから、屋敷は前にも増して住み心地が良くなった。

 新しく増えたメイド達の働きだ。まづるは故郷から呼び寄せた彼女らに、私ほど身の回りの世話をさせない。それでこの美貌というのも、メイド達が何かしらの神業をこなしているのではないかと勘繰るくらいだ。





「ハネムーンはヨーロッパが良いわ。美しいお城を案内してよ」

「そうだね。式、急いじゃった所為で流れていたし、計画しよっか。結婚とかなしにしても、姫猫とは旅行したかった。一緒に学生らしいことしていたの、結局、三ヶ月もなかったし……」



 丸井の車に揺られながら、流れゆく異国の景色を眺めていた私の脳裏に、みゆきさん主催の社交クラブの合宿が蘇ってきた。


 昨日のことのようにも、遠い夢での出来事のようにも思える。

 あの夜、私はようやっと対等に付き合える友人を得た感動に舞い上がり、平凡な少女らしい四年間が当たり前に続くものだと思い込んでいた。
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