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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
道中、存分に時間がある。私はまづるに西洋の城の話を聞いた。
今でも名家の末裔が暮らしている城から曰くつきの廃墟まで、まづるは中高生の時分、長期休暇ごとに海を渡ってはあらゆる景色を眺めたという。
私達はスマートフォンまで起動して、本格的に旅行の計画を立て始めた。
「一人前にパートナー気取りだな。姫猫、まづるちゃん。お前達がそこまでごっこ遊びにのめり込むとは思わなかった。……ったく、さんざんオレをバカにして。姫猫、ついでに家事も経験してみたらどうだ?世間の女とやらは、メイドのスキルを備えた方が値打ちが上がるそうだぞ」
「お兄様、アドバイス有り難う。まづるのためなら、掃除や料理をするのも悪くないと思うわ」
「やめて、姫猫の手が荒れるじゃない。必要なら私がするから」
「いいえ、私が」
お兄様のからかいに付き合ってやっていたところで、車が山道に入っていった。塗装された一本道はコンクリートを走っているのと変わりなく、私達を友人の私宅へ導いた。
「やぁ、遊、姫猫さん。まづるさんも、ようこそ、我が家へ。結婚式以来ですね、上がって下さい、今日は愉快な友人達が集っています」
屋敷のあるじロベルト・ポーターは相変わらず気さくな社交性を振る舞って、私達を部屋に案内した。
まづると再会したあの日以来、私は度々、お兄様と彼の屋敷を訪っていた。
米国選手を腰抜けにした例の作戦が成功して以来、ロベルト達はすっかり味をしめていた。従来に倣って慈善活動を続けながらも、他方では、世間にとってショッキングな不正事件を彼ら自らが仕組むようになっていたのだ。