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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
* * * * * * *
土曜日、私は従来無縁だったはずの場所に足を踏み入れた。
在園者の家族達も招待されたバザーは、虫酸も走る偽善者らの巣窟だ。
がらくたから古びた洋服、日用品、それからただでさえ貧しい庶民が労働の大安売りをしているハンドメイド雑貨まで、点在したブルーシートにところ狭しと並べてあって、それ以上に人の流れも絶え間ない。
お兄様は懇ろの女達と散策へ向かったあとだ。
私もこれみよがしに垢抜けない装束をした人々を観察しながら、作戦開始までの時間を潰していた。
「丸井は戻って良くてよ。二時には終わるわ、美味しいランチのとれる場所でも探しておいて」
「そうだね。折角のデートに貴女がいては、遠慮しちゃうわ」
「いいえ、姫猫様、まづる様。お二人だけでこんな庶民の溜まり場になどいらしては、危のうございます。お二人に万が一のことが迫った時には、この丸井、身を呈してお守りせねば」
「多分、姫猫の方が頼れるよ」
私の腕が、にわかにまづるに引かれていった。
混雑した道端で、私の胸はまづるの柔らかな胸にうずもれる。
「姫猫はかよわいお嬢様でも、強い意志を持ってるんだ。それに気高い。姫猫には強力な命運が味方していて、私は彼女とならどこにいても憂慮はないよ」
「有り難う、まづる」
私が何一つ不自由ない令嬢だった時分、蓮見先生が兼言したことだ。
もっとも、それが災いして、私は随分と苦労を味わってもしまったのだが。
「ただ、それでは私が守ってあげたくなる女の子じゃないみたい」
「私なんかに姫猫の護衛は畏れ多いわ」
「まづる、貴女は謙遜なんてしないで」
私はまづるの抱擁をほどいて、彼女の片手をとって歩き出す。