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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
スマートフォンに指令が入ると、私達はミルバとジェニーという二人の介護士達を探した。
名を確かめながら歩き回る必要はない。私達は、標的二人の特徴を知らされていた。
「ところで、さっきすれ違ったのはローラとユリザね。二人ともイメチェン?」
「男装よ。ターゲットが男しか愛せない女だった時のために備えるんだと言ってたわ」
「私も化ければ良かったな。この世の悪の根源は、大体、男。ロベルトさん達の計画は、ちょっと業務妨害みたいじゃない。男の振りでもして、昔唯子ちゃんと観た映画みたいに犯罪者ぶって女性を泣き叫ばせてあげたかったかも」
「貴女に泣かされるなら気持ち良いでしょうね。三井田さんとは実践しなかったの?」
「襲われ役ばかりだったからね。姫猫、やる?」
今夜、と、私はまづるにまといついた。
仮に今度ロベルト達の陥穽に助勢する機会があっても、けだしまづるはローラ達に倣わなかろう。
罪悪を男になすりつけたいがためであっても、まづるは彼らを気取るには、彼らを疎んじすぎている。
私は、彼女のような人間が男と自称していたならば、或いはそこに美を見出すかも知れない。
ただし、愛に性別は関係ないなどという世間知らず達の常套句は、独善的な美辞麗句だ。愛とやらがそれだけ尊ばれるものかはさておき、仮に愛を傾倒や執着と仮定する。さすれば、私がそれらの良し悪しを判断するものさしとして、性別は重要だ。もしまづるが男であれば、私は見向きもしなかった。