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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
「まづるは、髪を隠して胸を潰した時点で激しい拒絶反応をきたすでしょうね」
「どっちもいらないんだけどね。でも、学術的で言うところの女のアイデンティティーを捨てたところで、学術的には男と判断出来てしまう。不便で奇妙、人間って」
「大丈夫よ。あくまで学術的な話だから」
職員達が切り盛りしていた屋台は、やがてどこも長蛇の列が伸びていた。
身内に囲まれた在園者はともかく、きょろきょろと辺りを見回して、動揺を主張している高齢者達の姿も目立つ。
介護師及び施設員らは、目に見えて少なくなっていた。残った彼女ら、ないしは彼らも、同僚達がサボタージュしていようとは夢にも思っていないのだろう、人手の削れた分を補わんとしているばかりに忙しなく動き回っている。
「まづる、あれね」
私達もターゲットの姿を見つけた。
ポリーの話した通りの佇まいをした女達は、例にもれなく善良な顔を貼りつけて、二人の老婦人と手遊びをしていた。
「黒地にアイボリーのロゴの入ったポロシャツに赤いジーンズ、サーモンピンクのワイシャツにベージュのスラックス、二人とも髪は胸にかかるほどのストレートのブロンド…………うん、ポリーの言った通りだね」
「姫猫!」
にわかにお兄様の声がした。
私が打ち合わせ通りの芝居にかかろうとした時のことだ。
「お兄様……。どうしたの、私これから貧血を起こして、ミルバ達に救護室へ案内させるのよ」
「姫猫、あの二人はオレに任せろ。大変な面白いものを見つけたんだ。お前達はそっちへ行け」
お兄様の話すところによると、バザーという繁忙時のため、ある日本のボランティア団体がヘルプに入っているという。
海外にまで独善的な行為を売りつけたがる日本人──…私やまづるが興醒めしよう彼女らの顔は、お兄様曰く一見の価値があるという。