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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
およそ三年間離れていた妹は、すこぶるみすぼらしくなっていた。
私がきよらをきよらと甄別出来のは、忌々しくも、けだし彼女が伊達に仏野の血を引いていないからだ。
はっとするほど華やかな存在感に透き通るような真珠肌、高級な絹のごとく黒髪に、お母様によく似た目許──…誉められる天恵は、少しばかり容姿に怠惰になったところで、そう簡単には影を潜めない。
「楽しそうにやっているわね。」
自分でも不可解なまでに落ち着いた声が、私の喉を抜け出ていった。
すっかり庶民に成り下がったきよらの双眸は、瞠目して私を見ていた。
「お……お姉、さま……」
「きよら先輩、ご姉妹がいらっしゃったんですか?初めまして、私は──…」
「他人よ!!」
二十代前後と見えるボランティア員の一人が口を挟むや、きよらの声が荒ぶった。
「きよら様、……」
「まだいたの?丸井さん」
「きよら様──…」
「よく残っていられたわね、あんな狂った家に。お姉様に、家族を人質にでもして脅されてるのかしら。だったら相談に乗るわ、私を助けてくれた方がいらしてね、お名前は出せないけれど、貴女のような市民のためならきっと良く働いて下さるわ。ねぇ、お母様は?お兄様もここにいるの?お母様はどうしたの……お母様は?!」
「きよら様、落ち着いて下さいっ」
「姉妹喧嘩なの、貴女、構わずお仕事を続けて」
まづるが、きよらに付き従っていたボランティア員の少女を宥めた。
少女は瞳で憂慮を訴えながら、私達を離れてゆく。
私がまづるの腕を引くと、彼女は私の肩を撫でた。