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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
作戦通り、私は救護室で目を覚ました。
絶入の間に見た夢は、お母様との思い出だ。
きよらは毎年、祭りを楽しみにしていた。飽きもしないでお母様と贔屓にしているメイドの一人を連れ立って、夏祭りへ出掛けたものだ。
彼女が浴衣を新調したのは二度くらいだ。浴衣を替えるくらいなら、お母様と金魚掬いや輪投げがしたい、お母様と屋台の珍しいものを口にしたい。
それがきよらの言い分だった。お母様はその度に、貴女は欲がないのねと言って笑った。
私が彼女らに同行したことはない。お母様達は私を誘わなかったし、私も浮かれた母娘ごっこが性分に合わなかったからだ。
目覚めた私の目の前に、当然、ミルバとジェニーの姿はなかった。
お兄様からメールが入っていた。
作戦は滞りなく進んでいる、体調が優れないのであれば引き上げる時間まで休んでおけということだった。
まづるが私を抱き締めた。
私は泣けるほど優しい抱擁に安堵して、縋るように愛しているとささめいた。冗談だと付言するのも忘れなかった。