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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと
「生意気な娘だこと」
外国語が耳に触れた。
私は棘を含んだその声を、初め、私に向けられたものと認識出来なかった。
お姉様ら三人が、ようやく私の前から消えた。あとは裕子ちゃんが施設の様子を見てくるのを待っているだけだった。
「私、ですか」
声の主を確かめた途端、今度こそ血の気が引いた。
シャツにスラックスにエプロン、そこにいたのは、あれだけ探して見つからなかった職員の装束をした女だ。
但し、美しいブロンドを一つに束ねた彼女だけではない。
彼女の脇に四人の男女が並び立ち、私をねめつけていた。
「お前以外にいねぇよ、ゴミ女」
「貴女、姫猫の妹なんですってね。妹のくせに何て口を利くのかしら」
「オレの妹があんな態度とってきたら、体罰だな」
「そうねぇ、姫猫は繊細だから倒れちゃったし……私達が代わりにやっちゃいましょうか」
「いや…………」
五人が私ににじり寄る。
私は周囲に助けを求める。だが、平和に生きてきた彼女らは、私とお姉様の確執をただの姉妹喧嘩と信じ込み、職員に扮した女達の脅迫も比喩だと捉えている。
五人は私を介護施設の空き部屋へ引きずり込んだ。
彼女らの会話から察するに、職員に扮した女はポリー、ここの関係者の協力を得て潜入に成功したのだという。お姉様の犯罪仲間だ。
「良いこと?きよら。私達のことを他言すれば、貴女の保護者とやらがただでは済まされないわ。姫猫のパートナーのご実家は、貴女の国ではすごく権力があるんですってね。もっとも、その前に、貴女のお兄様の方も血の気が多いようだけど……」
「妹ちゃん。今回は、痛いことはしないでおいてやるよ。体罰が気持ち良いなんて、得したな」
チャリ、チャリ…………
「やめて……やめて下さい…………」
男達がベルトを外す。女達が私を撫でて、エプロンや衣服を除きにかかる。
二度と味わわないで済むとたかをくくっていた。
安寧にほだされていた私の意識は、両腕を押さえつけられて、なされるがままになっていても、妙に落ち着いている。
和紀さん──…!!
私に初めから人間らしく接して、これからも誠実であり続けよう人。
彼に謝罪を繰り返しながら、私はお父様の出世の妨げになるまい行動に準じた。