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淫徳のスゝメ
第7章 私がつい経験した蜜月のこと





「疲れた?」


 かつて王城だった廃墟近くの一等地、それ自体が芸術品のようなルネッサンス様式を彷彿とするホテルの個室で、私はまづるに振り向いた。

 メイドのいないスイートルームは、世界にまるで二人きり、私とまづるだけが切り取られたようである。

 私は寝台に腰掛けて、まづるは鏡台、窓を透かした街明かりがテーブルランプを補翼していた。


「いいえ」

「そう?歩きっぱなしだったのに。明日はゆっくり休もうか」

「お兄様のお土産は?」

「適当で良いじゃん。あんなに私達をからかって」

「それもそうね」


 空港に、別段珍しくもない大衆向けの菓子が並べてあった。

 市名の入ったカステラでも買って帰れば、お兄様も少しは私達を根に持つことを省みるかも知れない。


「ね、まづる」

「ん?」

「本当に疲れてないわ」

「どれくらい?」

「……言わせるの?」



 貴女と楽しいことをしたいくらい。



 私からそのように口にすれば、まづるはまた、私をあばずれ女とからかおう。そして私は淫靡に彼女を誘って、聞き分けのないペットのように蹂躙を請う。


「…………」

 バスローブの腰紐は、といても無音だ。

 私は一糸まとわぬ裸体をはだいて、生気あるドールの顔を見つめる。

「ぁっ」

 まづるが私に距離をつめるのにも音がなかった。

 たわやかな指と指が私の乳首をやおらつねって、濡れた唇が私のそれに蓋をする。
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