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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
* * * * * * *
浴室を出ると、まづるのメイド達がワゴンを転がしていた。
「あ、姫猫様。ハーブティーが入っております」
「頼んだ覚えはなくってよ。もうすぐ夕飯だから、先にリビングで待っていたいのだけれど」
「では、お茶はリビングへお持ちします。今夜は冷えますので、生姜をブレンドいたしました。お口にお合いになりませんでしたら、別のものを準備させていただきますので」
メイド達は、私が湯冷めして体調を崩すことを懸念しているらしかった。
大抵、私は入浴後にお茶を淹れさせる。だが例外もあって、今夜は肌のために飲んでいるハーブティーは食卓に出させることにしていたのである
「お茶、僕もいただいて良ろしいですか」
メイド達の斜め後方、曲がり角から紹也さんが出てきた。
「ちょうど姫猫さんに味見してもらいたかったものがあるんです。クッキーで、これだけだと口が乾燥してしまうので、……出来れば遊にはまだ内緒にしていたいから」
かくて私はまづるのお気に入り達にテラスの見える踊り場へお茶を運ばせて、紹也さんとテーブルを挟んだ。浴室で世話をさせていた女達は持ち場に戻した。
カモミールと生姜の匂いが、無色透明のティーカップを立ち昇る。
私は夕餉前ということから、三種類あるクッキーを一枚ずつ、小皿にもらった。