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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
「星型がプレーン、ハートがチーズ、これはココアミックスのアイスボックスクッキーね」
「はい、遊は好き嫌いがないみたいだけど、折角なら気に入って欲しくて。姫猫さんなら、彼の好みをよくご存知でしょう」
「そうね」
ハーブティーで喉を潤すと、爽やかな甘みを連れた湯温が私に染み通っていった。
私は一つ一つ試食しながら、次のクッキーへ移るごとに、ハーブティーで口に残った風味をリセットする。
お茶は、格別だ。
これだけでいくらでも飲めそうだが、クッキーにも相性抜群、目前のメイドらの前職はお茶のプロだったのではないかと推し測りたくなるほどだ。
「有り難うございます。姫猫様が屋敷へお越しになっておいでだった頃は、紅茶をよくお出ししておりましたものね。カモミールティーもお客様にご好評いただいておりまして、ハーブ園から直接取り寄せているものなんです」
「そうだったの。私がローズティーを気に入ったばかりに、あればかり出してくれていたものね。これも美味しいわ。品物選びもそうだけれど、貴女達はお茶を淹れるのが上手いわね」
「お褒めに預かり光栄です」
「はは、僕も気に入りましたよ。さて、姫猫さん。クッキーの方はいかがです?」
私は、チーズがお兄様に合うだろうと結論を出した。
紹也さんの自信作も優劣ないほど絶品だったが、お兄様はお茶を嫌ってこそいなくても、普段それほど嗜まない。それよりは丸井と同様、水代わりに酒を飲んでいるものだから、つまみにもなるチーズ味がしっくりくる。