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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
「そっか、初めからもっとしょっぱいのを作っていれば良かったな」
「いいえ。きっとお兄様は喜ぶわ。貴方、本当に一途なのね。浮気したりしないの?」
「ええ。姫猫さん達を見ていると、浮気が悪いことじゃないとは分かるんです。でも、あいつ以外、目ぼしい人がいないっていうか……」
「女は圏外のようだしね」
「お察しでしたか」
「私達の初夜で、貴方、私やちさとを汚いものみたいに扱っていたわ」
「すみません」
「良くってよ。まづるなんて、男には触れることさえしないから」
全く蔑むべき種類の人間だ。
好き嫌いであればまだしも、お兄様しか愛せない紹也さんは、いっそ不感症と呼べるだろう。
だのに私は、紹也さんに羨望こそ覚えても、反感をいだくことはない。
不感症も、或いは楽なのではないか。
「お兄様以外に割く時間がもったいないのね」
「時間の問題というか……」
「私も経験したことがあるわ。ハマッてしまった人がいてね、その人と会う時間をこしらえるために、不登校気味だった学校にも通ったし、金ヅル達とは会わなくなったわ」
「──……」
「だけど今になって振り返ってみると、それは彼女にとって、有益でも何でもなかったと思う。お兄様も同じ。だから見返りだってない。貴方は、もしお兄様に見限られたら耐えられる?」
メイド達が空き皿を下げた。
私はぬるくなったハーブティーを喉に流して、紹也さんをしかと見つめた。
数秒置いて、紹也さんの唇が、微かに震えた。