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淫徳のスゝメ
第1章 私が淫蕩に耽るまでのこと
* * * * * * *
花澤舞、二十七歳、現県知事の第一秘書。その素顔は、五歳の第一子を持つ会社員のパートナー。
私はこの親しい女を羽毛の寝台に縫いとめて、さらさらと指を滑り流れる栗色のミディアムヘアを撫でながら、その唇にキスを被せた。
間断なく、憑かれたように、繰り返し何度も。小鳥がじゃれ合うのを真似るような口づけは、私と舞さんの劣情を、確実に盛り上げてゆく。
ここは、早良(さわら)家でもとりわけ陽当たりの良い、一人娘の私室だ。
そこそこの権勢を振るう政党の党首を父親に持ち、私は両親にうんと愛されて、生まれ育った。父は母を、母は父を軽んじるくせに、互いの血を間違いなく引く一人娘は愛せるらしい。
舞さんは、完膚なきまでに見事な塩梅の凹凸(おうとつ)に恵まれた肢体を、シーツに投げ出していた。
私は猫脚の家具を好む。よって寝台も猫脚の、西洋から取り寄せたものだ。
天蓋から下りたフラワーレースが、おりふし、私の腕にまといつく。淫らごとに耽る間は大抵一つに束ねているロイヤルミルクティー色の巻き毛が、舞さんの少し暗めの直毛に浮く。
「綺麗だわ……舞さん。ね、見せて……」
「恥ずかしいです……っ、ん、……」
「意地悪な人。ねぇ、ボタン外すよ…………柔らかい……ほんとはうずうずしてるでしょ……」
舞さんは、とりわけ珍しくもないサイズの乳房を、図って小さめの衣服に覆う。そのためジャケットは常々はち切れんほど張って、カッターシャツをはだいてみると、やはりワンサイズ下のブラジャーが、手のひらに包み込める程度の乳房を誇張している。