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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
『あの子は女の肉を腹に収める。お金で身体を買わせる楽しみ、実の家族を壊す楽しみ、肉親と交わる楽しみ──…。姫猫が仏野の娘でなかったら、世間はあの子を見て見ぬ振りはしないでしょう。偏見に基づいて、偏見が定めた制裁を加える。でもね、あの子が自分勝手なのは、あの子の所為ではないわ』
『蓮見、さん……は……姫猫をそんな風に、思ってたの……?』
『姫猫を理解しているからよ。私には、彼女こそ道徳。父親に犯されて、お母様や妹には不当な扱いを受けて、力ある人間の玩具になってきた。月並みの平穏が、あの子にはなかったの。だからこそあの子に人一倍の自由があるのは当然だし、詭弁家どもも言ってるわ。苦しんだ分、その見返りが待っている……と』
『…………』
『正常じゃないわ』
さりとて異常とは呼べない。
姫猫をとりまく、否、私達をとりまく世界こそ、尋常とは呼べないからだ。
『姫猫はとっくに壊れてる。誰にも理解されなかったんだもの。なぶられて、強がって、誰にも弱音を吐けなかった。あの子を救おう、守ろう、理解しようと努めるほど、あの子にはむごい。何をしても追いつめるの。姫猫の道徳に共感出来ても、姫猫になることは出来ない。早良さんは、ただ彼女と楽しみを共有しているだけ。彼女の断片も理解っていないわ』
『…………』