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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
* * * * * * *
稜は大仰な抱擁で、元教え子を出迎えた。
私とまづるが稜の招待を受けたのは、彼女らが鉢合わせて一日跨いだあとのことだ。
まづるが私に伝えたところでは、稜はいつでも訪問を受けると話していたらしい。にも関わらず昨日は留守、夜に住所から電話番号を調べて連絡をとると、顧客と会っていたのだという。そして、今日なら都合がつくと加えた。
「姫猫は、また大変美しくなったこと……。女は二十歳前後が花盛りと言うけれど、姫猫、貴女は頻く花咲く果実だわ。潤しい、妖しいほどにね。味わうごとに私達を魅了しながら、貴女自身はその味覚を握らせざるところに根を張って、咲き誇る。十三の頃から変わらないわね、そのくせすごく変わったわ。眩しい姫猫、可哀想に、災難な目に遭って……。安心をし、貴女は少しもやつれていない、どこでどんな楽しみをしていたの、恋を語る女以上に輝いているわ」
熱い紅茶に甘い焼き菓子、ケーキ、ベリーのコンフィチュール──…。
まるで一週間前から私の訪問を予測してでもいたように、テーブルを彩ったもてなしは、私の舌を満足させた。
稜の歓待はそれだけにはとどまらない。
傾聴しているのも草臥れるほど熱心に、彼女は私を賛美する。職業柄、教育者は演説が得手というが、それにしても饒舌だ。