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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと





 寝室は、稜にしてはごくありきたりだ。

 広々した間取りに大きな窓、黒い遮光カーテンを開ければ陽当たりも良かろうそこは、寝台が二つにチェストと鏡台があるだけで、テレビに見るビジネスホテルを彷彿とする。一角あるがらんどうなスペースは、けだしそれだけここが広い所以だ。



 稜は窓際の寝台に腰を下ろすや、私とまづるに足先を向けた。そして命じた。

 私は稜のソックスを除いて、左足をしゃぶりにかかる。

 まづるは稜に抗議した。客は私達であって、もてなす立場の人間に従う義務はない。それが彼女の言い分だ。


「聞き分けのないペットは身体に教え込むしかないかしら。私なりの接待よ……。それとも、まづるは最初から痛いことをされる方が好みだった?」


 稜の指先がまづるのおとがいを滑っていった。


 その間にも、私は稜の親指から小指まで、丹念に唾液を塗りつけてゆく。

 這いつくばって、焦がれていた餌にでもありつけた猫よろしく、足裏まで求める私の舌から、フローリングにまで唾液が散った。


 じゅる、ちゅる……ぺちゃ…………



 稜の肌だ。温度だ。匂いだ。…………


 私を、彼女が侵食してゆく。

 まづるとは違う旧懐、官能が私をかき抱いて、私は稜を媚び慕う。
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