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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
「可愛い人……。さっき触れたばかりなのに、姫猫を待っている間、蓮美さんが妬ましくて仕方なかった……」
「あっ……はぁっ、待っ……て、たって……。んっ……、疲れてたんじゃ……」
「あんなの、嘘……」
ちゅ、ちゅ…………
ちゅ…………
まづるの指と指の間で、私の乳房がいびつにへこむ。連綿と続くキスの雨が、うなじ、首筋、耳朶の裏を行き来する。
「私以外の女が貴女に触ってるとこ、見たい気分じゃなかったんだ。誰にも姫猫を触らせたくない……。私のものにしたくなる、そんな気まぐれになることだって……」
「はぁぁっ」
「…──あって良いじゃない……」
むにゅ……
ちゅぅぅ…………
切実な音色に翻弄されながら、肉体とはかけ離れた場所で、静かに私は確信していた。
稜の話は事実だ。
私とて愛執した女は他の人間に触れられないようにしたい。
美しい目の女はその眼球を、柔らかな頰の女はその頰を、喉に乳房、腕、恥丘──…どれだけ卑しい身分の女も、生意気にも私を夢中にさせる断片があった。
かつて私は仏野聖司の長女で、今は仏野遊の実妹だ。気に入ったものが手に入らなくてはいけないし、それを他人に搾取されることがあってもいけない。まして対象そのものが私に叛くなど、仮定するにもおぞましい。
愛すれば、愛される。
分不相応な身分にあったお母様は、愚劣な妄想にとり憑かれていた。愚劣な妄想を主張して、彼女の愛する一人娘も彼女自身の誇り、権限、生命まで、一滴も残ることなく失った。
恋は夢物語、愛は妄想だ。永遠などありえない。
永遠などありえないなら、私のものでなくなる前に、私のものにすれば良かった。