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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
「姫猫……」
愛してる。
愛してる。愛してる。
いつかのきよらの暴言にも、私は妄言を吐くまでにくずおれた。
こうも幸福な閨房にも、おどろおどろしい空音が漂う。
愛してる。
誰に認められなくても、貴女にさえ拒まれても、──…。
私には、貴女しか。…………
それは私の絶叫か、或いはまづるのささめきか。
私は、声の主を確かめることが出来なかった。
ぷち…………
私の手元が、肉を貫く音を立てたからだ。
スプリングの軋む音、私の肢体がシーツにこすりつく衣擦れ、それらに比べれば風音同然なのに、その音は、耳の奥を圧迫するだけの威力があった。
「っ…………」
それから数秒後のことだ。
私を快楽にとりこめていた女は、催眠術にでもかかったように倒れ込んだ。全裸の配偶者に覆い被さって、憎らしいほど穏やかな寝息を立てて。
「──……」
私は、まづるの静脈から注射を抜いた。
機器の中で水位の減った液体は、睡眠薬の原液だ。
かくも美しい女をブーケに変えるなどばち当たりも良いところだ。規格外に美しい女は、その肌色も生気に溢れていなくてはいけない。
メイドの手など許さない、私の手だけを覚えていれば良い。