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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
シーツに赤が染みてゆく。ネグリジェは、とうに本来のピンク色をなくしていた。
白い女の破損箇所を這い溢れた体液が熱い海に拍車をかけて、私の正気をさらう。
喪失の恐怖はひいていた。
配偶者の殺害は、破瓜に似ている。私を囚える、不毛なしがらみ。律子もまづるも、生きてこそ私の官能を満たしていたが、私に孤独を課して初めて、私を恍を超えた絶頂へ放つ。
まづるのどこを好いていたのか。
ダイレクトな体温と鉄錆のフレグランスに抱かれる内に、私は理性を取り戻しつつあった。
それと同時に、生きたままブーケになった女のどこを嚥下したいか、検討出来るだけの余裕が出てきた。
容姿や生まれ育ちを差し引けば、私はまづるの指が好きだ。私をこよなく蹂躙して、私にこよなく献身する。
だが、種も仕掛けもない彼女の指が、どうしてあすこまでの甘美で激烈な愛撫をなせたのか。
それは、ともすれば精神そのものが一因していたのかも知れない。まづるの肉体を適当な女に預けて、屍骸を性具に私を貫くよう命じたところで、同じ快楽が得られる保証はない。
さすれば、私は、まづるの精神を機能させていたものを賞翫しなければならない。
ぐり……するっ…………
晦冥にとけた肢体を数秒間なぞったあと、私はまづるの一部を削った。
指でもなく脳でもない、まして神だの霊魂だのをあてにしている連中が夢をいだく心臓でもない、それはまるで違った部位だ。ただ直感が求めた場所、私は指の腹が私に伝えた官能が最も濃ゆい、最も芳しく最も柔らかな肉塊を欲していたのだ。
私は、血肉を満遍なく削いでいった。
こうも私を魅了した女を、一部だけ味わって残りは破棄するなど出来ない。仮に私の胃袋が無限なら、骨の髄まで収めたかった。
じゅる……じゅる……じゅるる…じゅる…………
新鮮な血液を啜りながら、恥部の奥の分泌液を吸いながら、私は苺のパックに盛れるだけの肉を捥いだ。