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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
世界はまるで幻だ。壊れやすいのは、まばゆかった日々だけではない。
とるに足りない空の光、風の音、目交の色、まづるが私に注いだ愛、私が彼女に寄せた信頼、ほんの些細な日常も、睡眠薬とナイフ一つで消える。
私の目下にばらけた女体さえ、さっきまでは私を呼んで、私を甘く抱いていた。色彩をなくした私の目も、さっきまではあまねく美醜を見ていた。
これが事実だ。
安らぎなどない。人と人との感情が交わることなど決してないし、私が愛だの執着だのに懐柔されることもない。
壊れた私を誰かが愛することもない。
「楽しかったわ。貴女のお陰で、きっと私、一生分の楽しみを得た……」
血の丘陵に唇を浸して、まづるを啜った。
「丸井」
「はい、姫猫様」
「なるべく細かく切り刻んで、火にかけてきて。それは器に盛って、それから、私を縛ってくれないかしら」
「姫猫様を、ですか?」
「猫みたいに食事がしたいの。太くて長い性具(もの)にいじめられながら、跪いてがっつきたいの」…………