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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと


「まづるは姫猫の都合の良い友人の顔を気取って、貴女の善良な相手になっていた。貴女のするのとなすこと肯定して、ただ貴女の信頼に計算高く縋っていた。本心なんて誰にも覗けない、貴女もまづるも、そう、たかをくくっていた。薬の鍵は私が持っている。もし姫猫が貴女に構っている暇もなくなるほど、遊び歩くようになったら……こっそり使ってごらんなさい、私はそう言ってまづるに薬を売りつけた。だけど、つくづく自意識過剰な女だわ、私に鍵を投げつけて、帰ったわ」

「…………。何故……」


「姫猫が欲しいから」


「──……」

「七年前、初めて貴女と懇ろな時間を過ごしてから。いいえ、貴女がウチのクラスに入ってから」

「…………」

「他の何を排除しても、どんな手を使ってでも、私のものにしたかった」

「…………」



 私は稜の言葉を信じた。

 稜の忠告を蔑ろにしたばかりに痛手を負って、それでも尚、彼女は私を見捨てなかった。

 私は今度こそ従った。



 稜は、彼女の欲望だけを根拠にして、私に親友を屠らせたのだ。

 同じ精神を語り合った。私の肉体が満たされるに不可欠だった。私が所有するのでもなく、されるのでもなかった、ただただ対等だった女を補食させた。


「なんて自分勝手なの……」

「言ったはずよ、姫猫は私を処刑したくなるかも知れないと」

「…………」



 処刑どころでは済まされない。


 稜は、昔からこうだった。私の怖れることをして、私に未知のショックをもたらす。



 昨夜、私は大きな破瓜を経験した。

 幼かった頃、私が肉体的な破瓜を経て快楽の正味を得た時も、稜は厳しく、優しかった。視聴覚室でセックスしながら私は泣いた。稜ほど優しい愛撫を知らなかった。脚を開きながら、あんなにも大切にされることを知らなかった。
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