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淫徳のスゝメ
第8章 私を競った愛達のこと
「キスして」
「──……」
テーブル越しの稜の影が、私を覆った。
「手、握って」
私の腕を遊んでいた稜の右手が、私の指に絡みつく。
「もう一回、キスして。稜の味が分かるほど、……」
乳房がどんな風になっているか確かめて。服を脱がせて。私が何を考えているか、性器を触って。
稜は、私の要求の一つ一つに応えていった。
私達は同じソファに身を寄せて、肌と肌をすり合わせた。
私の唇が稜を求める。稜の指が私を求める。
私は、稜に肉体を蹂躙させたいのか分からない。ともすれば難関な感情表現を怠って、肉体でしのいでいるだけかも知れない。少なくとも私は濡れていた。稜に報告をしていた時にも優って、稜が私に告白して以後、私は輪をかけて疼いていた。
とろ……じゅる、じゅる…………
掠れた低めのメゾを含んだ稜の唾液が、喉に流れる。私の肉薔薇から覗いだ窪みが、稜の指にすり寄って、自ら飲み込む。
「あんっ!」
くちゅ……ずぶっ……ずぶっ…………
「ああんっ……っっ!あっ、ああっ…………」
独善的な女だ。私の想像を遥かに超えて非情だ。
稜は、こうまでして私を手に入れたがったのか。
三年前、稜はまづるに死の宣告を下した時から、この計画を想い描いていた。私にまづるを見限らせて、私に稜を選ばせることだけ考えていた。
「最低よ……っ、んん!はぁっ、はぁ……稜ぅぅ……あん、私、わたしぃぃ……っっ!!」
稜がいれば、もう血迷わない。血迷って、愛だの恋だの執心だのにうつつを抜かせたりしない。
私は絶叫を上げながら、稜の腕を水浸しにした。
第8章 私を競った愛達のこと──完──