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淫徳のスゝメ
第9章 *最終章*私が淫蕩に耽った末のこと
まづるさんの消息が絶えたという風の噂を聞いてから、二年が絶った。
二つ遡った夏の初め、お姉様との再会を契機に、私も仏野との絶縁に溜飲が下がった。
帰国してから一年半は、またお義父様の保護下でとりとめない穏やかな日々を送った。そして先月、大学を卒業した会田和紀さんと婚姻した。
会田さんのお父様は、嘆いていた。和紀さんには大学院に進ませて、父親をしのぐ敏腕に育て上げたかったらしい。もっとも、本人は既に役所内での人望も厚い。彼は、父親より学んだ年数が短い分、実戦で追い抜くのだと張り切っている。
私は福祉の仕事をやめた。
今でこそ会田きよらと名乗っていても、私はお義父様を後ろ盾にして施設に入った。周囲は私を市議員の娘として待遇せざるを得なかったし、いずれ私は管理職に就くまでになっていた。
会田の家内が、夫に引けをとらない役職に就いているなどみっともない。和紀さんの両親と、そしてお義父様。彼らが互いに遠慮し合って話した末の結論だった。
結局、私は無力だった。
女と肉親に迷走しているお姉様を非難しながら、私とて全ての人間を受けつけられない時期もあった。
だが、私は歳を重ねた分、少女であったがためにいだいた誤想を断った。
お母様の語っていた聖書は正しかった。
人間は、老若男女、そして弱者も強者も平等にある。女は家庭を守りながら子孫を遺して、男は彼女らを庇護するために汗水垂らす。
私は安寧に舞い戻った。
お姉様やお兄様のように異常な愛に走ることなく、和紀さんという優しく頼もしい人に貰われて、ぬくぬくと暮らしている。