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淫徳のスゝメ
第9章 *最終章*私が淫蕩に耽った末のこと
「自首なさって……お姉様」
きらびやかな宴席で、私はお姉様を窘めた。
主席で寛ぐお姉様は、腐っても血の繋がった実妹を見下ろして、かつて仏野を家庭崩壊に陥れた女に腕を絡めていた。
蓮見先生は、ひとときでも玩具にしてもてあそんだ仏野の次女を、今や赤の他人同然に、まるで意に介していない。時折お姉様に微笑んでは、お姉様の声を聞いて、お姉様の気に入る女達と二言三言を交わすだけだ。
「相変わらず礼儀のない妹だこと。折角、私の誕生日パーティーに招待してあげたのに。面白い話はそれで終わり?貴女のその、和紀とやらのセックスや、彼の浮気や貴女の浮気。私が聞きたいのはそういう話よ」
「きよらさん、お姉様へのプレゼントに手を抜いてはダメよ。しがない公務員のパートナーである貴女が、仏野の敷居を跨げるだけで有り難いのよ。お姉様に感謝なさって、もっといやらしい話をしてごらんなさい」
お姉様を囲ってすました紀子さんに同調する声が、あちらこちらに続いた。
そう、今は四月、私はお姉様の誕生日を祝福するパーティーに呼び出されていた。
ここは、かつて私とお姉様が生まれ育った屋敷の広間だ。
まづるさんが殺されて(私はそう憶測している)から半年後、蓮見先生は遠い海の向こうで麻薬取締法違反の疑いで起訴された。
米国政府に賄賂を握らせたのは、お姉様だ。微弱ながら海外にも通じる仏野の制圧も頼って、彼らの捜査をやめさせた。
その時分、お姉様が屋敷を追われる元凶だったらしい有本陽毱さんが警視庁を引退した。和紀さんの知人に聞いたところによると、アルツハイマーが職務に影響したらしい。
そして、お姉様は彼女に命を狙われる鬼胎も晴れてなくなって、日本に──…仏野の屋敷に戻ってきたのだ。