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淫徳のスゝメ
第9章 *最終章*私が淫蕩に耽った末のこと

* * * * * * *

 母親の他界を端緒に荒れくれた。さる資産家令嬢の父親は、娘の更生を期待して、彼女を田舎のミッション系スクールに送った。

 だが、令嬢は手に負えなかった。

 帰省の度に父親や姉兄に反抗して、挙げ句、父親が隠居した夏の始め、家を抜けて風俗店に違法就業、そこで公務員の客に出逢って、ソープ嬢と客らしい情事は未遂のまま、不良娘を哀れんだ彼の養子に入った。

 独尊だった令嬢も、男の言葉に逆らえなかった。

 暫くしずしずと日々を送った彼女は、ある時、新たな金づるの大学生と知り合った。さんざん非行に走ってきた令嬢は、恋仲となった彼の卒業と共に結婚、初めて愛というものに目が覚めた。愛に狂って愛に酔って、聖書を語るようにまでなった。

 幸福は長くは続かなかった。

 令嬢は久しく姉に呼ばれたパーティーで、うっかり学生時分の癖が出て、男達と乱交した。食事も忘れるほどセックスを楽しんだものだから、帰宅した頃には空腹に耐え兼ねて、餅を焼いた。


 その餅を喉に詰まらせて、令閨は二十二歳の生涯を終えた。…………





 お兄様はきよらについて、以上の通りのシナリオを立てた。

 私は警官達の前でしおらしく泣いて、和紀さんはきよらがかじったという餅を提出した。司法解剖の結果、実際、きよらからはお兄様達の供述通り、大量の精液が検出された。


 世間は私達を哀れんだ。和紀さんも庶民の血筋でありながら、悲恋のヒーローと謳われて、社交界で一躍有名になった。
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