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淫徳のスゝメ
第9章 *最終章*私が淫蕩に耽った末のこと
舞さんの下腹を撫でる私の指は、かつての炫耀をなくしていた。姫猫と揃いのプラチナのリング。
睡眠薬を盛られた翌朝、私はメイド達に一部終始を聞かされた。
彼女らは、姫猫の殺意を察知して、その行動を先回っていた。姫猫の所持する毒薬を全て睡眠薬にすり替えて、私が眠らされたことを確かめたあと、私と身代わりの衣服を交換、そして寝室の電球を外した。
私の身代わりになったのは、私を慕って化粧品まで真似をしていたメイドだ。
メイドらが働く必要はなかったのだという。彼女らが姫猫を見ていたところによると、姫猫は初めから私に睡眠薬を使うつもりでいた。そして、明かりの一切もつけないで、夜目だけでメイドの血肉を食した。
私のメイドに、睡眠薬は使われなかった。姫猫の私室に毒薬を元通り戻すまで、睡眠薬を置いておく必要があった。メイド達は、睡眠薬を余分に用意する余裕がなかったのだと言った。
先日、私はメイド達の反対を振り切って、姫猫が招待されたというパーティーに顔を出した。
私を案じた顔触れに、当然、かつて特にいじらしかったメイドの姿はなかった。
件のメイドの至心を無駄にしないためにも、あすこで私は、姫猫に声をかけねばならなかった。だのにまばゆく笑う姫猫の風姿と、彼女の隣で自信に満ち満ちていた蓮見さんの間には、入り込めない連結があった。
私は舞さんをからかいながら、その呼び水は、もはや彼女に無礼講を許す手段でしかなくなっていた。
姫猫に逢うまで、確かに愛着していた女達との閨事は、今や子守唄ほどの役割しかない。
何をしていても満たされない。
貪るように着飾って、貪るようにセックスしていた。何においても豊潤だった親友も、だのにいつも華やかな場所の中心で、静謐な空虚に呑まれていた。