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淫徳のスゝメ
第1章 私が淫蕩に耽るまでのこと
私は手の空いたメイドを呼びつけた。彼女ら二人に、私室に吊るしていた女体に投薬させて、運ばせた。
仏野邸には四季折々の風景が巡る庭園がある。春には天高く広がる碧落を鮮やかな薄紅が染め上げる一角に、私はブーケを横たわらせた。
がり…………くちゅ……ぐちゅ…………
美しいブーケから昇る芳香を、鉄錆臭いと形容しては、色消しだ。
私はブーケの最も評価していた部位を、ナイフで切り取る。
逆三角の、薄毛が覆った赤と白の塊。今でこそみずみずしい肉塊に変わり果ててしまったコレも、秘めやかな漿果であった頃は、たとしえなく白かった。
私は一人のメイドに断片を持たせ、ブーケの本体を埋葬した。
もっとも、私にこんな力仕事は無謀だ。作業の大半は彼女らにさせた。
「震えているの?」
「いい……え……」
メイド達が、口々に私の正当をまくし立てる。
口舌とは他所に、彼女らの従順な音色は慄いていた。
「良いわ」
先々月まで少女のように色づいていた茶けた塵が、つむじ風に巻かれていった。
「貴女達もお茶に同席なさい。心配ないわ、すぐに代わりのメイドも入ってくる。お父様がどれだけ私を愛しているか、貴女達にも話してあげる。そうしたら、貴女達が怯える必要もなくなるでしょう」