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淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと
「姫猫さんのお肌は、社交界でも評判ね。シルクのように滑らかで、陶磁のようにきめこまやかだと……。噂以上だわ。特別なお手入れをされているの?」
「はい。愛用の二社のスキンケア用品を併用して、朝晩フルコースでお手入れをしたあと、専門家にブレンドさせたハーブティーを飲んでおります。それから一週間に一度、契約農場から取り寄せたプラセンタを」
「興味深いわ。あとで詳しく聞かせて頂戴。もっとも貴女は、ドレスの中身も優れた器量なんでしょう?」
有本さんの秋波が私を舐め回していた。
黒目がちな濡れた双眸。切れ長の目許を飾ったそれは、さしずめ媚薬の弾丸だ。
私はお父様との閨事を取り上げた。酒の入ったお父様も、私の話に補足した。
「隠居した親父とお袋は、若い頃から夢見がちでしてね。私の聖司という名前も、偶像主義者の恥晒しも同然の由来だったのですよ。私はこの名前を踏み台に考えました。聖なるものを司るのではない、私自身が聖なるものになることにしたのです。欺瞞と譎詐の蔓延る今の時代に埋もれぬよう、私は人一倍勉学した。私は姫猫を真理の道へ導きたい。この子は子供達の内で一番可愛い。きよらの方は、どうやらまりあの陰気が伝染してしまったようだが……。私はこの子に、倫理や法がいかに儚く、愚民どもの集団同調の習性がいかに危険で、やつらの崇める神とやらの意向に反しているか、若い内から教えておかねばならないのです」