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淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと

「それで考え深い貴方は、前の奥様がご子息をお産みになってまもなくも、理性的な判断をされた。彼女の怠慢がその肉体に余分な脂をまとわせた時、将来に危機を覚えたのね。当時五歳だった遊くんを残して、彼女を仏野の家から追放した…………」

「ええ、全くその通りです。あれは家柄はそこそこでしたが、頑固で、自尊心が強く、私に尻の穴も突かせなかった。まぁ、それはあのまりあにも言えることだが……あいつは後ろも貫通済みだ。ただ私のペニスは受け入れんというだけでね。…………一人目の家内は、見るに耐えられないものでした。成長期でもなしに、五キロも増えたのですよ。ああ、有本さんは、お会いになったことがありましたね。あの女です。肉体の肥大化は自己管理が疎かな証拠だ。あの怠慢が仏野の家にも影響しては、私達の行く末に暗雲が差します。私はそこまで見通して、判断したのです。あの頃の思いがあって、私は未だに遊には辛く当たる。あれを見ると、あの女を思い出す。遊は察しているのでしょう、三ヶ月に一度、帰ってきて良い方です」…………



 オードブルに続いて冷製スープ、シチリア産オリーブのつけあわせてある釜焼きパン、メインディッシュに仔ウサギと血統書付きチキンのフリット、季節の野菜のタルティーヌ──……私達は極めて克明な議論を進めながら、ディナーに舌鼓を打った。

 食後のお茶は、スウェーデンのメーカーから取り寄せられたという、花がブレンドされたセイロンティーだ。
 銀色の光を帯びた金魚鉢のようなポットにメイドが熱湯を注ぎ淹れると、色とりどりの花々が、鼈甲色の宇宙の中で華々しく舞い上がった。それはデザートプレートの甘みを引き立てながら、ほど良く糖を引き締めた。



 デザートプレートを平らげると、有本さんが私と席を外したいと言い出した。

 あるじに代わって、お父様を接待するという女達が現れた。



 私は有本さんと二人きり、屋敷の奥に案内された。
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