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淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと
帰り支度を済ませた私に、有本さんは誓約書を提示した。
そこには、概ね以下のようなことが記されてあった。
仏野姫猫が今後行うあらゆる脱法を赦免すること。仏野姫猫は積極的な兇行に努め、程度に応じて臨時賞与を付与すること。今後の行動が当方の娯楽を充足させる見込みの持てる人物と認め、仏野姫猫に年間◯◯億の功労金を賞与すること。…………
最後に、それらの私を対象とした待遇は、有本さんが健在している間は有効であることが約束されていた。
私はメイドが差し出してきたペンを受け取った。
契約人欄にペンの先をつけた私は、ふと、有本さんを見上げた。
「一つ、良ろしいでしょうか?」
「なぁに」
「私はお父様に、書類は信頼に値しないものと教えられております。お母様がお父様と親族の誓約を結んだのち、彼女の生殖器は私の通う中学校教師に所有権が渡ったのと同様、私達に与えられた姓名、権利、規則、評判は、証明するものが文字である以上いつ効力が切れるか分かりません。有本さんも、先ほど約束は反故される性質を備えるものとおっしゃいましたが」
「可愛い姫猫。貴女は注意深いのね」
サインを躊躇う私の片手を、有本さんのそれが包んだ。