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淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと
「確かに、約束は必ずしも守られるとは限らないものだわ。ただし、反故の機能があるということは、その必要も備えているの。善良を気取った国民達が傅く神様は、全知全能だもの。その全知全能の神様が私達の存在を許容しているのは、私達が不要な側面を持ち合わせなかったからではなくて。仮に私達に許容外のものが備わったとすれば、神様は全能なんでしょう、私達からそれを取り除くはず。私達は私欲から対象を契約で桎梏するものだけれど、自衛のためにそれを破棄しなければならないこともある。……姫猫?生まれ育ちの高貴な貴女には想像も及ばないでしょう、広い社会には大変な底辺にいる愚民どもが山ほどいる。何故か分かる?彼らの苦艱は、自他を甘やかしてきた皺寄せなのよ。人が罪や不義を攻撃するのは、他人や理性が尊いのではない、自身の魂とやらの堕落を怖れてのこと。それだって愚かなものだわ。魂なんて、脳の中枢神経が培ってゆく自我でしかない。肉体さえ滅んでしまえば、自然のサイクルに帰還して、真新しいものが用意されるというのに。自縛は彼らにとって甘蜜。貧しい彼らは労苦の分報われるものと信じているし、正直でさえいれば神様が味方につくと信じている。そうした絵空事に酔いしれた挙げ句、何が起きるでしょうね。…………そう、真に分別をつけた人間の駒になって、欺かれるの。生易しい紙約束なんて破棄されて、利害一致は破綻している。さっきの商売女のように、搾取だけの対象になるの」
「では……」
「貴女が怖れることはない。言ったでしょう?壊れるものは、その必要があって壊れるのだと。貴女のお父様だって、お母様のヴァギナは手放すことになったけれど、その行程なしでは貴女にペニスをあてがうことは出来なかった。貴女は私に不義したところで神様は何も罰しないし、私が貴女を気まぐれに困らせようとしたところで、貴女ならそれを好機に出来る。何故なら、私も貴女も選ばれた人間だから。私はこの通りの役職にいるでしょう。羈束なく暮らしていると退屈で、たまに無知蒙昧を気取ってみたくなるのよ。考えの貧しい彼らになったつもりになって、吝嗇な理窟を並べ立てて、ままごとみたいな法を語る。従って、この誓約書はごっこ遊びよ…………姫猫。もちろんここに記してあることは実行するし、貴女は贅沢に、凄惨に、きらびやかに楽しめば良いわ」