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淫徳のスゝメ
第1章 私が淫蕩に耽るまでのこと





「素敵な奥さん。……尻を上げて、脚を大きく開けてごらん」

「おやめ……下さい……」

「今はお願いの時間じゃないわ。私が命令しているの。早くなさい」


 びゅ…………ビシィィィッッ…………





 その日は土曜日だった。

 私はメイド達と夕餉前のお茶を楽しんでいた。

 フェンネルのハーブティーが尿意を促し、渋々パウダールームへ向かった私は、はたとした。



 その音は、お母様の私室の扉を突き破り、私の鼓膜を揺るがした。



 お母様を跪かせて、犬や猫同然の姿勢を強要しているらしい女の声にも、私は聞き覚えがあった。



 気だるげな、少し低めのメゾの声。純粋培養の少女らの集う学び舎でこそ、イエス様だのマリア様だの芋臭い教義を展開している声の主は、私の通う中学校の担任教師だ。

 蓮美稜(はすみりょう)。

 宗教学者でもある彼女は、とても教育の場に携わる人間と思い難い凄艶な人となりの持ち主で、女生徒らからは密かな人気を集めている。
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