この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと







「遅れてしまってごめんなさい。目新しいハーブに浸かっていたら、支度の時間が押してしまって」



 ある初夏の夜、私は例のごとくお父様の知人のパーティーに招かれていた。

 稀少なエッセンスを手に入れた私は夜まで待てず、推奨された処方の通り、メイド達にそれをバスタブに張らせた。

 とろみ湯は、過剰な夢見心地に私を酔わせた。

 私は首から下を天国に浸し、おりふしメイドの身体にちょっかいを出し、ついでに顔や髪のケアをさせた。


 肩紐にオーガンジーのフリルがついた、シャンパンピンクのフレアスカートにパニエの仕込んであるワンピース。それをまとい、私はムスクが仄めく洗いたての雲鬢に、ブリザードフラワーのコサージュを挿した。

 パーティーコーディネートを仕上げた頃には、開宴三十分前になっていたのだ。



「構わなくてよ。美しい姫猫ちゃん……貴女が来てくれるだけで、私のパーティーが華やぐわ。ハーブの話を聞かせて頂戴」


 主催の婦人は私にシャンパンを勧めると、私の話を熱心に聞いた。

 アラカルトをつまみながら他の客との歓談に回り、お父様とダンスを踊った。

 もっとも私はダンスより、芸術に感心しやすいたちである。どこで噂を聞きつけたのか、婦人は私にピアノを勧めた。

 選曲したのは『ナゼルの夜会』だ。どことない疑惧をくるんだアップテンポに始まるそれは、意味深長な八つの変奏で成り立っている。


 季節を巡る風の音色が、私の口舌を必要としない声になる。無辺に広がる、浅ましくちっぽけな世界──…存在するに値しない、途方もなく果てない宇宙。私は叫ぶ。叫べないから、心魂を閉ざす。ただピアノの音色に乗せて、いにしえの嘆きを指でなぞる。…………
/403ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ