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淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと
けたたましい称揚が、私を襲った。
演奏を終えて、私は間近な女達の輪に引きずり込まれた。側にいた紳士の団体が恨めしそうにこちらを見ていた。私達はきわめて親しく、シャンパンの並んだテーブルに場所を移した。
「素晴らしい演奏だったわ。長調とも短調とも聞き取れない、不思議な音色。エレガントなのにどこか退廃的な感じがしたわ」
「有り難うございます。あれは二十世紀フランスの音楽なんです。数多いた芸術家達の中には、新たな時代の実権を握った人達、そして彼らの啓蒙に考えもなく屈従していた国民達を嘲笑した作品を生み出す者が現れたんです。シュルレアリスム、その影響を受けた音楽はとても少なかったそうですわ」
「まぁ、そうだったの。私も好きよ、そういうの」
「貴女の場合はリベルタン、セックスを解放した物語で自涜を充実させているだけでしょう?」
色とりどりの生花達から、どっと華やかな笑い声が立った。
「ところで、姫猫さんはそれにも優る、ファンタジックは食生活を好まれているのだとか」
「怖ろしい、バレていましたの?実は明日の朝食も──…。さっきメイドが粗相をして、ご覧の通り、私はパーティーに二分も遅れてしまいました。これでは主催のお姉様にも申し訳が立ちませんから、今夜存分に彼女を折檻したあと、愛らしい頬をいただきますわ」
「私がお邪魔しては迷惑?」
「お召し上がりになりたくて?」
「ええ。姫猫さんのような美肌の秘訣は、もしかすれば美少女の血肉も紐づいているかも知れませんもの」
「まぁ、お上手。それではお招きしないわけにはいかなくなったわ」
「殿方はお召し上がりになりませんの?」
聞き手に徹していた同世代の令嬢が、私に問うた。