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淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと
「土下座でどうだ……今回限り、聞かなかったことにしてやるぞ。愚かな頭を謝罪しろ!!私の許可が下りるまで、お前は畜生同様、全裸でいろ!!」
バキィィイっっ…………
お母様の絶叫は、いつかの女のそれに似ていた。有本さんとの思い出のたおやめ。
もっとも、あの記憶は幻かもしれない。
思い出とは夢幻だ。
お母様にもお父様との来し方があって、お父様にもお母様との来し方がある。私にも、あの甘酸っぱい漿果のお茶のフレーバーが、お母様を思い出させる。
だが、私達は、ここに裸体で確執している。
私には、お母様に匹儔して、お父様もおぞましい。それでもお母様の苦艱に顫え上がるのは、お父様こそ私の正当だからだ。
世間の常識や偏見か、私自身か。
少なくともお父様は後者をいつでも重んじる。
「何をなさってるの!」
金切り声が、にわかに私達の時間を止めた。
きよらが駆け込んできた。善人面を恥じもしない実妹は、揉み合う両親に割り込むや、お母様を庇って一方の親をねめつけた。