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淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと

* * * * * * *


 高校生活最後の最後に、家を出た。



 家出娘の私のあては、限られていた。

 私宅を二駅離れただけの、唯子ちゃん達の愛の巣だ。



 品行方正で無知な従姉妹を気取って四日、唯子ちゃんの配偶者は、私を世話の焼ける可愛い親族としてもてなしてくれていた。朝早くに出社して、定時には残った業務を放棄してでも必ず帰路につく彼には、配偶者と善良な義従姉妹が昼間どうして過ごしているか想像つくまい。


 私の不評は社交界では埋もれていた。


 舞さんに、唯子ちゃん。人間として数えるべきか危ういが、直美。

 彼女らに加えて、このところ私は数多くの既婚者達をかどわしていた。

 そうした私の素行が未だ両親の耳にも入らないのは、社交界にはもっと話題にすべきスキャンダルがあるからだ。





「いつ帰るの?」



 街は、バレンタインデー色一色だ。

 浮かれた暖色が店々を飾り立てる帰路を歩いていた中、唐突に、唯子ちゃんが呟いた。
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