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淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと

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 卒業を間近に控えた弥生の初め、お父様が私に友人を紹介したいと言い出した。


 私は交友に不足なかった。社交界では揚々、学校の方は世に言う不登校だったが、クラスに顔を出せば誰とでも気兼ねなく話せたし、下級生らにも私を知らない少女はいなかった。


「けれどもね、姫猫。お前には同世代の友人が必要だ。確かに、お父様は他人の感情とは移ろいやすく、さしたる利益も与えないと教えていたね。肉体を伴わない愛情、友愛、信頼は、人間に隙を生ませ、時に我々を罠へいざなう。ところが、全くの思い通りに過ごしているのも味気ないものだ。姫猫、お前のお気に入りの杉川さんや坂田のご婦人を例に挙げよう。彼女達は戸籍謄本の威嚇をもってして各々一人の男を桎梏しているが、案の定、彼らは彼女達を主人か飼い主としか見なせないでいる。ご婦人らは味気ない日々を余儀なくされているだろう。お父様には友人がいるよ。倫理観や金銭感覚のほとほと近い、対等に議論出来る紳士達だ。彼らとは目新しい知識を交換し、刺激し合い、お陰でお父様はこの歳になっても冴えている」



 会わせたいのは、私も知る国会議員の一人娘、早良まづる(さわらまづる)、同い年の少女らしい。容姿端麗の才色兼備で、ある一つの噂を除けば、生家の裏金も使わないで、エリート進学校を首席で卒業した優等生だという。
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